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三条サポステの利用者が文章作成の練習に用います。


by sanjobunshou

自分に素直になろう(~・表で笑い、裏で泣いているあなたへ・~)

 本性はばれています。どんなに自分を取り繕っても、ピエロ役を演じても、「社会」という、ある規模の集団の中で人と関わっていくうちに本性は自然と出てしまうものなのです。
 私は2007年11月に行われた、新潟サポステと三条サポステの合同合宿でのワークショップの内の一つでそれを知りました。
 そのワークショップとは「大ウソつき大会」です。 それでは、「大ウソつき大会」の体験を下記に書いてみます。


 「さて、今から自己紹介をしていただきます。ただし、ウソの自己紹介です。思いきりありもしない大ウソをついてください。たとえば、『私は実はハリウッドの大スターです』などという風に。そして『この仕事をしていて楽しいのはこういう時です』という点も加えてください。あまり考えないで、口から出てくるにまかせて、どんどん大ウソをついてください。合図をするまで何度も回してください」

 参加者一同、戸惑いながらも、こうして大ウソつき大会が始まりました。
 「私、本当は宇宙人なのです。地球の様子を偵察して楽しんでいます」
 「私は実はAV女優です。一皮むけば皆いっしょね」
 「大きい声では言えませんが私は貿易商です。もうかりますよ」
 「私はさっきのAV女優さんの相手役です。うふふ」
 「わたしはロック歌手なんです。俺の精一杯の歌にみんながのりのりになってくれるのが最高っす」

 笑いを誘いながらこんな風にひと回り。さらにどんどんウソを続けます。
 
 みんな、必死で次から次へと大ウソをつきあいます。ときおり爆笑が起こりました。5回ほど回ったところで、時間になり終了。ふぅー、と疲れからため息がもれます。よく平気でこれほどウソをついたことか…。それに、どんどん続けてウソをつくのは結構大変なのです。
 ほっとする間もなく、続いては〈うわさ話〉の時間です。一人が輪の外に向いて、みんなに背を向けます。残りの人は、そのひとが話していたウソから、実際は初対面でよく知らないその人がどういう人なのかをひそひそと「うわさ」をするのです。私自信の大ウソについては、こんなうわさ話がなされました。
 「あの人、ロック歌手とか総理大臣とか言っていたじゃない。かなり目立ちたがりなんじゃない?」「思いきりはじけたいみたいだったね」「権力志向かな」「いや、権力というより自分の持っている力で大勢を喜ばせたいみたいだったよ」「板前です、とも言ってたし」「いずれにせよ対象は必要で、大勢の人と関わるのが好きみたいだね」「そうね、自分の能力を目一杯提供して、人に喜んでもらうのを自分も楽しんじゃう感じだね」などと好き勝手にうわさしあいます。
 うわさされている方は、そのうわさ話を自分でメモしていきます。すると、どうも口から出まかせに大ウソをついたつもりでも、ウソをめぐるうわさ話は自分の性格のある部分を実によく言いあてていることに気付きます。 「驚きだな…、確かにそういうところ私あるんだようなぁ~。みんな初対面の人なのに私のこと知らないはずなのに、なんでこんなに自分が表れてしまうのだろう…。怖いものだな。」と思ったものです。

 以上が私の体験したワークショップとそのときの感想です。


 本性はばれています。とは冒頭で書きましたが、その人の全てが、ばれているということはないと思います。ばれているのは、その人のほんの一部だと思います。また、みんながみんな同じように共感して、その人の本性の一部に気がついて共有しているとも思いません。それぞれがその人の本性の異なる一部分に気づいているものではないかと考えます。気づかれている本性はほんの一部分であり、その人の本性に気づいているのは、それぞれ一部分さまざまなのだと考えます。具体的に言うと、ジグソーパズルのピースを、人それぞれが握っているようなものです。
 ですが、そのバラバラのピースが組み合わさってしまうと、その人の裏側、本性が見えてくるのです。ですから、集団の中では本性はばれてしまうのです。いくら、自分を取り繕い、ピエロ役を演じてもばれてしまうのです。
 

 以上のことから、無理して自分を取り繕い、ピエロ役を演じる必要などないのです。表側では明るく笑い、裏側で独り泣くことなんてないのです。素直な自分を出してみませんか?どうせあなたの本性はばれているのですから。
 ではいったい素直な自分とは何なのでしょうか?本当の自分とはなんなのでしょうか?自分の本当の気持ちとは、いったい何なのでしょうか?
 これは、独りで悶々と考えていても決して答えはでません。人との関わりの中で見つかるのです。人と交わることで見つかるのです。人と話、接することではじめて自分という「人」を定義できるのです。
 本当の自分が分からないという方は、人と話、接することで、「素直な自分」を探してみてください。そして、「素直な自分」で人と話、接してみてください。独りで泣かなくてよいのです。泣くのならみんなで、悲しむならみんなでそれを共有しませんか。楽しいことも悲しいことも分かち合いませんか。<H.K>




参考文献:ワークショップ 中野民夫著 新しい学びと創造の場 岩波新書 95~98頁
by sanjobunshou | 2009-11-21 08:15 | 利用者の文章